■出棺に際して

出棺の際には、亡くなった人との最後の別れと亡くなった人がこの世に舞い戻らないようにとの意味を含んだ風習が見られます。 亡くなった人の自宅のデエと呼ばれる部屋において葬儀を行い、デエから縁側、外へ出棺しその際におがらで作った仮門(鳥居)を用意し棺をくぐらせる。 (おがらは後に竹や篠に代わっていきます。) そして、くぐらせたらすぐに仮門を崩す。亡くなった人が舞い戻らずに成仏するようにとの願いがあるようです。
デエは出棺後ほうきで掃き清める。これも、やはり亡くなった人が再び戻って来ないようにという、亡くなった人への畏怖と成仏への願いと思われます。そして、掃き清めた後、お手伝いの人達が自宅に十三仏を飾り、後壇を作ってくれます。
デエですが、正式にはデイ、漢字は出居。(下図を参照してください。)

部屋の機能と名称

この出棺後、部屋をほうきで掃く行為や出棺時の仮門(鳥居)くぐらせる風習ですが、仏教儀礼として行っていると思われがちですが、それだけではないこともあります。
部屋をほうきで掃くという行為は、結婚式を自宅で行っていた頃ですが、花嫁さんが実家を出るとその部屋をほうきで掃いたそうです。 これは嫁いだ花嫁さんが二度と実家に戻らないようにという意味だそうです。また花嫁さんが、嫁ぎ先の家に着いた時、嫁ぎ先の玄関におがらの仮門(鳥居)を作り、片足を入れ嫁ぎ先の姑さんと杯を交わすという風習があったそうです。そして、杯を交わし終えると仮門を崩す。これも出棺と同様再び実家に帰ってしまうことがないようにと願いがこめられていたそうです。
ですので、家に入るときにも仮門を作り、家を出る時も作るという仏教とは違う民間風習ともいえるかもしれません。

※おがらとは…皮を剥いだ麻の茎のことです。 花嫁さんの頭の上あたりに見える棒が仮門(鳥居)の部分です。確かに玄関で身半分入って盃で飲んでいます。

嫁ぎ先の玄関で片足を入れ嫁ぎ先の姑さんと杯を交わす花嫁さん